なぜ「心理学部はやめとけ」と言われるのか?その理由と将来性を解説

保護者の方向け

「心理学部はやめとけ」という言葉を目にして、進学を迷っている方も多いのではないでしょうか。

心理学部が人気なのはなぜか、そして何故やめとけと言われるのか、心理学部の勉強内容、心理学部に向いている人はどんな人か、心理学部が強い大学就職先、心理学部でおすすめの資格、失敗や後悔を避けるには、FAQなど、皆さんが抱える様々な疑問に答えます。

この記事を通して、心理学部の実態を正しく理解し、後悔のない進路選択をするためのヒントを見つけてください。

この記事で分かること
  • 心理学部が持つネガティブなイメージの背景
  • 心理学部の実態と学習の難しさ
  • 心理学部で得られるスキルと将来の可能性
  • 心理学部の学びを活かすための具体的な戦略

「心理学部はやめとけ」と言われる本当の理由とは

  • 心理学部が「やめとけ」と言われるのは何故?
  • 心理学部が人気なのは何故なのか
  • 心理学部の勉強内容はイメージと違う
  • 心理学部に向いている人はどんな人か
  • 心理学部で後悔しないための3つの戦略

心理学部が「やめとけ」と言われるのは何故?

心理学部の進路について調べると「やめとけ」といった否定的な意見を目にすることがありますが、これにはいくつかの具体的な理由が存在します。

最も大きな要因として挙げられるのは、就職における専門性の活かし方に関する課題です。

多くの学生が、大学で学んだ心理学の知識を直接活かせる専門職、例えば公認心理師や臨床心理士を目指しますが、これらの職業に就くためには学部卒では不十分であり、大学院への進学がほぼ必須となります。

当然ながら、大学院での専門的な学びには多額の学費と時間がかかるため、経済的・時間的な負担は決して小さくありません。

学部を卒業してすぐに心理専門職に就くことが難しいため、多くの卒業生は一般企業への就職を選びます。

しかし、その際に心理学の専門知識が直接的に評価されにくいと感じる人が多く、「せっかく専門性の高い学問を学んだのに、他の文系学部と同じ扱いになる」という不満や「つぶしが効かない」というイメージにつながることがあります。

資格取得のハードルの高さも、この学部の進路に対する懸念点です。

公認心理師は2017年に施行された比較的新しい国家資格ですが、取得には「指定大学で必要な科目を修了し、さらに指定大学院を修了する」または「特定の施設で実務経験を積む」といった厳しい要件が定められており、誰でも簡単に取得できるものではありません。

また、入学前のイメージと実際の学びとのギャップに苦しむ学生も少なくありません。

心理学は「人の心が読めるようになる」といった漠然としたイメージとは異なり、科学的なデータや統計に基づいた実証的な学問です。

心理実験の実施、論文の執筆、そして統計解析といった理系的な要素が不可欠であり、これらに苦手意識があると、学びが苦痛になってしまう可能性があります。

さらに、心理職の雇用形態や収入もネガティブなイメージの一因となっています。

専門職に就いたとしても、非常勤やパートタイムでの勤務が多く、安定した高収入を得ることが難しいケースが見られます。

公認心理師の平均年収は、他の多くの専門職に比べて低めに設定されていることが指摘されています(出典:doda「あなたの出身学部は何位? 学部別の平均年収ランキング」)。

これらの現実的な課題が重なり、心理学は学問としての魅力が高い一方で、「やめとけ」という声が聞かれる背景となっています。

心理学部が人気なのは何故なのか

近年、心理学は高校生の間で非常に人気のある学問分野となっています。

多くの若者が心理学を学びたいと志望する背景には、現代社会の複雑化とそれに伴う心の健康への関心の高まりが大きく影響していると考えられます。

テレビのドキュメンタリー番組やインターネットのニュース、SNSなどでは、ストレス対処法、人間関係の悩み、自己肯定感の向上といったテーマが頻繁に取り上げられ、専門家による分かりやすい解説を目にする機会が増えました。

こうした情報に触れることで、「人の心の動きを科学的に解明したい」「自分自身や他者の心理を深く理解し、悩みを解決する手助けをしたい」と考える高校生が増えているのです。

また、エンターテイメント分野における影響も見過ごせません。

メディアで活躍する「メンタリスト」や、人の深層心理をテーマにしたドラマ・映画などが人気を博し、「心理学を学べば人の心を読み解けるようになるのでは」といった期待を抱く人も少なくありません。

さらに、心理学は文系・理系の枠を超えた学際的な学問であるため、幅広い学問領域に興味を持つ学生にとって魅力的に映る側面もあります。

数学や統計学を用いて人間の行動を分析する理系的なアプローチから、哲学や文学と関連付けて人間の内面を探求する文系的なアプローチまで、多岐にわたる学びの機会が提供されているため、様々な関心を持つ学生が集まってくるのです。

このように、心理学は私たちの日常生活に密接に関わっているという認識が広がり、多くの若者にとって身近で魅力的な学問分野として確立されています。

心理学部の勉強内容はイメージと違う

多くの人が心理学と聞くと、カウンセリングの実践や人間の内面を深く探求するイメージを抱きがちです。

しかし、大学で実際に学ぶ心理学の多くは、より科学的で実証的なアプローチに重点を置いています。

実験や調査を通じて客観的なデータを収集し、それを統計的に分析することで、人間の行動や心のメカニズムを解明していくのが、現代心理学の主流なのです。

学習分野は多岐にわたり、それぞれが専門的な内容を深く掘り下げています。

主要な領域としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 認知心理学
    人間の記憶、思考、言語、知覚といった認知機能の仕組みを、実験や脳科学の手法を用いて科学的に検証します。
  • 社会心理学
    集団の中での個人の行動、対人関係、社会的影響といった現象を、統計分析を通じて客観的に分析します。
  • 発達心理学
    人が生まれてから老年期に至るまでの、心と体の成長過程や発達段階における心理的変化を研究します。
  • 臨床心理学
    心の病気や悩みを抱える人々への支援方法として、カウンセリング理論や心理療法技術を学びます。ただし、これは応用分野の一部であり、学部レベルでは基礎理論が中心となります。
  • 生理心理学
    脳波やホルモンといった生理的反応と、心の状態との関係を科学的に探求します。

これらの分野を学ぶ上で、心理学に不可欠なのが数学と統計学です。

心理実験で得られた大量のデータを解析するため、回帰分析や分散分析(ANOVA)、t検定といった専門的な統計手法を習得する必要があります。

これらの科目は多くの心理学部で必修となっており、数学が苦手な学生にとっては大きな壁となる可能性があります。

心理学の学びは、地道なデータ収集と厳密な検証作業が基本であり、イメージとは異なる点が多いため、事前の理解が非常に大切になります(出典:公益社団法人 日本心理学会「心理学の各分野」)。

心理学部に向いている人はどんな人か

心理学部に向いている人には、いくつかの共通した特徴があります。

まず第一に、人の心や行動に純粋な興味を持ち、日常の些細な疑問を深く探求したいという意欲がある人です。

単に「人の心が読めるようになりたい」といった漠然とした関心ではなく、「なぜ人はこのような行動をとるのか?」といった科学的な視点で物事を捉えられる人が適しています。

次に、多角的な視点を持っていることも重要です。

一つの問題に対して、様々な角度から物事を捉え、多様な可能性を検討できる柔軟な思考力が求められます。

心理学は、単一の理論で人間の心を説明できるものではなく、複数の視点からアプローチすることが不可欠だからです。

また、客観性と倫理観も心理学を学ぶ上で欠かせない資質です。

心理学の研究や実践においては、被験者や相談者の尊厳を尊重し、個人情報を適切に取り扱う厳格な倫理観が求められます。

自分の好奇心を満たすためだけに相手の心を探ろうとするような姿勢は、心理学には向きません。

さらに、社会貢献への意識が高い人も心理学部での学びにやりがいを感じられるでしょう。

心理学を学ぶことで、人々の心の健康や幸福に貢献したいという強い思いを持つ人は、研究や専門職の道で大きなモチベーションを維持できます。

一方で、漠然と「人の役に立ちたい」「専門的なことが学べそう」といった理由だけで進学すると、地道なデータ収集や統計分析の作業に挫折したり、イメージとのギャップに苦しむ可能性があります。

明確な目的意識と、探究心を持った能動的な学習姿勢が、心理学部での学びを充実させる鍵となります。

心理学部で後悔しないための3つの戦略

心理学部への進学で後悔しないためには、いくつかの重要な戦略を立てておくことが大切です。

特に、進路選択の段階から将来を見据えた計画を立てておくことが成功の鍵となります。

1. 国家資格対応のカリキュラムがある大学を選ぶ

心理学の専門職、特に公認心理師を目指すのであれば、進学する大学が「公認心理師の受験資格が得られる指定大学」であるかどうかを事前に確認することが不可欠です。

指定校でない場合、学部を卒業しても受験資格が得られず、目標とするキャリアプランが大きく崩れてしまう可能性があります。

進路に迷いがある場合でも、資格取得の選択肢を残しておくことで、将来の可能性を広げることができます。

2. 大学院進学を前提に学修計画を立てる

心理カウンセラーや臨床心理士といった専門職を志す場合は、学部卒業だけでは不十分であり、大学院(修士課程)への進学がほぼ必須となります。

そのため、大学に入学した時点で、大学院進学を見据えた学修計画を立てておくことが大切です。

GPA(成績)を高く維持すること、研究室の情報を早めに収集すること、そして卒業論文のテーマを大学院での研究につなげることを意識しましょう。

これにより、効率的に専門性を深め、将来の目標に向かって着実に進むことができます。

3. 民間企業での応用スキルも身につける

心理学部を卒業した学生の多くは一般企業に就職します。

その際に重要となるのが、心理学の知識を直接活かせるスキルです。

具体的には、統計解析、データ分析、消費者行動心理、組織心理学など、ビジネスシーンで応用できるスキルを意識的に学ぶことが推奨されます。

これらのスキルは、人事、マーケティング、営業といった多様な職種で高く評価されます。

心理学の専門知識に加えて、汎用性の高いスキルを身につけることで、就職活動における競争力を高めることができます。

「心理学部はやめとけ」に惑わされないために

  • 心理学部でおすすめの資格は何か
  • 心理学部の主な就職先を紹介
  • 心理学部が強い学部と言われる理由
  • よくある質問:心理学部FAQ
  • まとめ:「心理学部はやめとけ」は本当か

心理学部でおすすめの資格は何か

心理学部の学びを将来のキャリアに活かすために、資格取得は非常に有効な手段です。

心理学の分野には、国家資格から民間資格まで様々なものがあります。

ここでは、特にキャリア形成に役立つ代表的な資格を紹介します。

公認心理師
心理職で唯一の国家資格であり、保健医療、福祉、教育、司法・犯罪、産業・労働の各分野で心の健康問題に携わる専門職です。

この資格を取得するには、指定大学で必要な科目を修め、さらに指定大学院を修了後、国家試験に合格する必要があります。

公認心理師は近年ニーズが高まっており、心理専門職を目指す上でのスタンダードな資格となりつつあります。

臨床心理士
心理カウンセラーの代表的な民間資格です。

指定大学院を修了し、認定試験に合格することで取得できます。長年の歴史と信頼があり、教育・医療分野を中心に根強い需要があります。

産業カウンセラー
企業内で働く人々のメンタルヘルス支援やキャリア相談を行う専門家です。

職場における人間関係の悩みやストレスへの対応、キャリア形成のサポートなど、企業内での心理学的知識の応用を目指す場合に役立つ資格です。

この他にも、大学で必要な単位を取得することで得られる認定心理士や、児童福祉分野で役立つ社会福祉士など、目指すキャリアに応じて様々な資格があります。

これらの資格は、単に知識を証明するだけでなく、専門性を高め、進路の選択肢を広げる上で大きな強みとなります。

心理学部の主な就職先を紹介

心理学部を卒業したからといって、必ずしも心理専門職に就くわけではありません。

実際には、多くの卒業生が一般企業に就職し、幅広い業界で活躍しています。

心理学で培った「人を理解する力」や「論理的思考力」は、多様な職種で高く評価されるためです。

同志社大学心理学部の進路データからもわかるように、卒業生はメーカー、流通、金融、サービス業など、多岐にわたる業界に進出しています。

特に、人の心を扱うことに長けたスキルが活かせる職種として、以下のような分野が人気です。

  • 営業職:顧客の心理を深く理解し、ニーズに応じた提案を行うことで、円滑な人間関係を築き、高い成果につなげることができます。
  • 人事・労務:採用活動での適性判断、社員教育、メンタルヘルス対策など、組織内の人材管理において心理学の知識は不可欠です。
  • マーケティング・広告:消費者心理を分析し、商品企画や広告戦略に活かすことで、効果的なプロモーションを実現できます。
  • 公務員:家庭裁判所調査官補や児童心理司など、専門的な知識が求められる心理職公務員の道もあります。

心理学の学びは、専門職に固執せず、一般企業でのキャリア形成を視野に入れることで、その真価を発揮できます。

柔軟なキャリア設計と、自己PRの工夫が成功の鍵となるでしょう。

心理学部が強い大学

心理学を学ぶ上で、どの大学を選ぶかは非常に重要なポイントです。

すべての大学が同じカリキュラムを提供しているわけではなく、大学ごとに研究分野や教育方針に特色があります。

資格取得を重視する大学

公認心理師や臨床心理士などの専門資格の取得を目指す場合、その資格に対応したカリキュラムを組んでいる大学を選ぶことが不可欠です。

指定大学院への進学が必須となるため、大学院との連携が強い大学は特に有利だと言えます。

例えば、立教大学明治大学関西学院大学は、公認心理師養成に力を入れており、大学院との一貫した教育体制が整っていることで知られています。

実証研究に特化した大学

心理学をより科学的・実証的に学びたい学生には、実験やデータ分析に強みを持つ大学が適しています。

こうした大学では、研究室の設備が充実していたり、統計学や脳科学の専門科目が豊富に用意されていたりします。

慶應義塾大学文学部心理学専攻や筑波大学は、実験心理学や認知心理学の分野で高い評価を得ており、研究者を目指す学生にとって理想的な環境と言えるでしょう。

総合大学で幅広い分野を学ぶ

心理学は他の学問分野と密接に関わっています。

総合大学の心理学部では、文学部や教育学部、社会学部など、他の学部の授業を自由に履修できる場合が多く、幅広い視点から心理学を学ぶことができます。

東京大学京都大学早稲田大学といった大学は、心理学部という独立学部はありませんが、学際的な学びの機会が豊富であり、特定の分野に絞らず広く探求したい学生におすすめです。

どの大学が「強い」かは、個々の目的によって異なります。

資格取得を目指すのか、研究に打ち込みたいのか、幅広い教養を身につけたいのか、自分の興味や将来のビジョンを明確にした上で、大学ごとのカリキュラムや研究内容をしっかり調べて志望校を選ぶことが大切です(出典:公益社団法人 日本心理学会「心理学が学べる大学・大学院」)。

よくある質問:心理学部FAQ

心理学部への進学を検討する際によく寄せられる質問をまとめました。

心理学部は文系ですか?それとも理系ですか?

心理学は文系と理系の両方の側面を持つ学際的な学問です。

歴史や哲学といった文系的なアプローチも学びますが、実験や統計解析、脳科学といった理系的な要素も不可欠です。

多くの大学では文系学部に属していますが、数学や統計学への苦手意識があると、授業についていくのが難しいと感じるかもしれません。

心理学部を卒業すると、すぐに心理カウンセラーになれますか?

学部卒業だけでは、公認心理師や臨床心理士などの心理カウンセラーになることはできません。

これらの資格を取得するには、大学院への進学がほぼ必須です。

学部での学びは、専門職への道を志す上での基礎固めとなります。

心理学部の就職率は低いですか?

多くの大学が公開している就職実績を見ると、心理学部の就職率は他の学部に比べて特別低いわけではありません。

ただし、院に進学する学生が多い大学では、学部卒の就職率が低く見えることがあります。

一般企業への就職も含めると、就職先は豊富に存在します。

まとめ:「心理学部はやめとけ」は本当か

心理学部への進学を検討する際に「やめとけ」という声は耳にしますが、その背景にはいくつかの注意点があることがわかりました。

  • 「やめとけ」と言われる主な理由は就職難と大学院進学の負担
  • 心理学の学びは地道なデータ収集や統計分析が中心でイメージと違う
  • 心理学を学ぶ上で、数学や統計解析の知識が不可欠になる
  • 心理学部の卒業生の多くは心理職ではなく一般企業に就職している
  • 心理カウンセラーを目指すなら大学院修了がほぼ必須となる
  • 心理学部で学べる分野は認知心理学や社会心理学など多岐にわたる
  • 公認心理師などの資格を取得することで専門性を高めた就職が可能
  • 心理学で身につく人間理解や論理的思考力は幅広い業界で活かせる
  • 興味や好奇心を持って学べば「心理学部はやめとけ」という意見に流される必要はない
  • 漠然とした理由で進学すると後悔しやすい学問である
  • 心理学部に向いている人は明確な目的意識を持っている
  • 専門職を目指すには大学選びや学修計画が鍵を握る
  • 多くの大学で就職率は95%以上と高く就職先は豊富にある

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